山に行くのは5月4日に予定していたが、4日に雨が降った為5日に順延する。夜中に降った雨が上がった5日の朝、空には青空が広がって今日雨が降る心配は無いようだ。
アプローチ口まで秋田市から約40kmと近く道も殆んど舗装路の為、予定より遅く家を出てセローに乗って店を出たのが8時半過ぎであった。太平から岩見三内に向かって走り出す。久しぶりに走る太平の道は、バイパスが完成していて部落の中を走る狭い道を走らないくてもよくなっていた。 |
この送電線は秋盛線と呼ばれるものらしく秋田と岩手を結ぶ幹線であるようだ。鉄塔付近の樹木は切り払われており、送電線を管理するには大変な手間が必要なようである。
FUNKYのメンバーの中に東北電力の保守関係の仕事をしている人がいて、その彼から送電線保守の大変さを聞いたことがあったが、この状況を見てその大変さがよく分かった。 |
倒木で行き止まりになっていた林道が、角館町との境の尾根に向かって登って行くのが見える。この道が山を越えて角館町と繋がっているのかは確認出来なかったが、私の感じでは山は越えていないと思われる。 |
尾根の所々には大きな切り株があった。この辺には大きな木は見当たらず、大きな木は全て伐採されてしまったようである。この木が伐採されずに残っていたとしたら、下から見上げるその姿は、見る者を圧倒する迫力があったに違いない。残念である。 |
木の株に沿って伸びる椈の枝?根?を発見。
どうすればこう言うことになるのか?私には理解できない。
雪が解けて間もないというのに赤い実をつけるこの名前は?
山桜は満開の時期を向かえていた。
イワカガミ?の小さな花には小さな昆虫が飛んで来ていた。
咲く前の葉のツボミ?
椈森(886.6m)の頂上は、角館町とに西木村の境にある。私は協和町、角館町、西木村の境が交わるピークまでやって来た。上の写真のピークが椈森、雪が見える尾根の右側が角館町、左側が西木村そして私の後側が協和町と思われる。
ここから山頂までは、30分もあれば行けそうで往復でも1時間は掛かるまい。しかし私が期待していたのは、残雪の上の尾根歩きで、この残雪の量では今一気が乗らない私であった。
今現在の時間は写真を撮りながらユックリ登って来たこともあってもう12時を回っており、此処で昼食を取ることにする。握り飯を頬張りながら周りの景色を楽しむ。正面には和賀山塊の山並みが遠くに見え、目の前には椈森の頂上が手のとどきそうな所に見えている。
爽やかなそよ風が熱った体を冷やし吹き抜けていく。鶯の声も聞えている。何処からか「キィー・・・ キィー・・・」という鳥の声が聞える。鳥の泣き声には詳しくは無い私だが、あまり聞いたことがない鳴き声で、もしかしてイヌワシではないかと周りを探して見たが、鳥の姿は見つけられなかった。
以前、河北林道近くの山でイヌワシらしき鳥の姿を目撃(私ではなく、相方)したことがって、私も一度ご対面したいものだと思っていたのだが、その願いは今回も叶わなかった。
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写真の中央上部に見える黒い点は虫。止まって休んでいると虫が集まって来て、気を付けていないと差される。質の悪い虫ではなかったが、顔や首を食われて今も痒い思いをしている。
昼食を食べている時、突然私の後で「バサッ・・」という音がした。驚いて振り向いて見たがそこには誰?もいなかった。こんな山の中に誰もいる筈も無いのだが、怖いのは熊。食事中でもあり、食べ物を狙って出て来られたら、熊と戦って勝つ自信は私には無い。
よく周りを見てみると、人騒がせな音をたてたのは椈の枝であっった。(右の写真参照) 雪の重さで押さえつけられていた椈の枝が、解けて軽くなった雪の重さに打ち勝って跳ね上がり 「バサッ・・」 という音を立てたようだ。
それは言ってみれば春の音とも言えるものだったのだが、熊の陰に脅える小心者の私は、飛び上がって驚いてしまった。しかし、その飛び上がって驚く姿を誰にも(熊にも)見られなかったのは幸いであった。 |
下りの尾根道。左が角館町側、右が協和町側である。
協和町と角館町の境の尾根を下って行くと味覚糖の飴の袋が落ちていた。この辺にもゴミを散らかす人種が徘徊しているようだ。多分山菜取りの連中が残したものだろうが、この袋一枚で何だかこの大自然が台無しになった気分になってしまった。
頭に叩き込んでおいた協和町側から登って来た尾根を見付け左に下り始める。此処からは送電線の鉄塔まで一本の尾根を下って行けばよい筈であったのだが・・・。
いつものことなのだが、下りの尾根は難しい。尾根は下るに従ってドンドン枝分かれしていく為、判断を誤るととんでもない所に連れていかれる。
今回も二回程進路の修正が必要であった。尾根なりに下って行くと、いつの間にか横に高い尾根が見えて来る。これは尾根を間違った証拠である。直ぐに引き返して高く見えた尾根に移る。
最近はそんなに下らない内に間違いに気付くようになったが、以前は本来の道に戻るのに1時間以上掛かったこともあった。
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秋盛幹線NO,133の鉄塔を横に見る場所に戻って来た。
目の前の電線にはウン万ボルトの電気が流れている?
何とか鉄塔が見える所まで戻って来た。登って来た時のルートとは違う鉄塔側に降りてみる。すると NO.133 鉄塔の下に出た。そこからは角館側と協和ダム側に伸びる送電線が見渡すことができ、その迫力ある景色に圧倒される。
此処からは東北電力提供の作業道を通って林道まで下るだけである。
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これから下って行く尾根には新緑の森が広がっていた。 林道には小さくセローも見えている。
こちらが中から見た新緑の森と作業道。
PM2:40セローの場所に無事帰還する。
出発点から送電線の鉄塔N0.133と134を見る。 |
今回の目標椈森は、私が毎日通勤している手形陸橋から見える山(一番右のピーク)で、いつか登って見たいと考えていた山である。アプローチは、2万5千分の1地形図を見て協和町の協和ダム奥の林道から入ることにする。地形図には登るコース近くに送電線が書かれていて、上手くすると作業用の道を利用出来るかもしれない。そうすればヤブ漕ぎの時間を短くできるのだが。
林道は此処まで。正面の鉄塔の建つ尾根から椈森山頂を目指す。
岩見三内から鵜養(うやしない)を通り協和町船岡に入る。そして協和ダムの横を抜け八右ェ門沢に入ると、沢の向かいの山には送電線の鉄塔が見えて来て予定の道であることを確認する。アプローチを予定にしていた沢の合流地点手前で木が倒れ道を塞いでいたが、歩いて確認して見ると登り口まではたいした距離は無く、バイクを置いて歩いてアプローチ口に向かう。
林道の道端に一輪のカタクリの花が開いていた。
しかし、一つ問題が起きた。尾根に取り着く為には沢を渡る必要があったのだが、昨日の雨のせいか沢の水量が多く濡れないで渡れる場所が見付からない。渡渉場所を探して上流に100m近く歩き、ようやく渡れそうな浅瀬を見つけバシャバシャと走って渡った。
そのまま正面の急な斜面を登り尾根に出ると、そこには私が予想したとおり立派な道があった。この道を辿って行けば、上に見えていた送電線の鉄塔までは行けると思われる。この尾根を走る道は、結構な急坂でヤブを漕く必要は無いが結構息が上がる。ヤブの方が手を使えるので楽だったかもしれない。
不勉強な私は、このツボミが何の花のツボミなのかを知らない。
一つ目の鉄塔を過ぎ二つ目の鉄塔に向かうと、道は尾根からそれて右に伸びている。ここで道から離れて尾根を進むことにする。此処からは道の無いヤブ漕ぎの始まりである。登りがい一段落した所でふと右手を見ると、さっき見えていた二つ目の鉄塔の送電線が目の前に見える。帰りは鉄塔側に下って東北電力の作業道を行った方が良さそうである。
標高が上がるに従って角館町との境の尾根が、視線の水平方向の位置に見えて来る。今私が登っている尾根は、最終的にはあの尾根に繋がっている。この尾根は痩せて狭い部分も無く、また笹ヤブや蔦も少なく歩き易い為順調なペースで高度を稼いでいく。
椈は葉には白い毛が生えているのが分かる。
いよいよ角館町との境の尾根が近づいて来た。
若葉の黄緑と山桜のピンクのコントラストが春爛漫を感じさせる。
今までより少し急な斜面を50m程登って、角館町と協和町の境となる尾根の出る。この付近から残雪が目に付き始める。帰りに迷わないように、周りの地形を頭に叩き込んでおく。下る尾根を一つ間違えれば、とんでもない所に下りてしまうので、出来れば折れた枝などで目印を作っておくよい。
ここで初めて今日の目標の椈森が見えた。まだ少し距離は有りそうだが、残雪が有れば歩き易く山頂に立つのも容易と思われる。暫しの休憩の後山頂目指し登り始める。
初めて椈森の山頂が見えた。
此処まで来ると椈森と呼ばれるだけに、辺り一面椈の森が広がっていた。この辺はまだ葉が出ておらず青空がよく見えているが、もう直ぐ新緑の葉で空は覆い隠されることになるだろう。
此処まで来ても残雪は少なくヤブ漕ぎが続く。昨年は標高800m位まで来ると山(太平山系)は一面残雪に覆われていたが、今年は一昨年白子森に登った時と同じ様な状況で、雪は少なく所々にしか見られない。
この時期、私が山に登る楽しみは残雪の上を歩くことで、春の日差しを浴びて歩く残雪の尾根歩きは、椈の葉が出る前という事もあって周りの景色がよく見え大変気持がいい。しかし今年は雪が少なく、今の時期1000m位まで上がらないと残雪の尾根歩きは無理なようである。
角館方面を望む。霞でよく見えなかったが薄っすらと角館の町並みが見えていた。
雪を撥ね退けて音を発し、私を飛び上がらせた張本人。
食事も終わりこれからをどうするかを考える。時間はまだ午後1時前。椈森の山頂まで行って帰って来るとすると、此処に2時までには帰って来れそうだ。しかし、期待していた残雪の尾根歩きは残雪が疎らで出来そうにも無い。
私がヤブ山を登る時、決めている事ある。
基本的に <午後1時を過ぎて先には進まない。> という決めである。
これは今までの経験から導き出したもので、季節により日没時間は変動するから引き返えす時間も変動してもよいのだが、私は基本的に午後1時以降は先に進まないと決めている。
今回の場合、椈森山頂に着いた時午後1時を回る可能性が高かったが、日没は秋口と違って遅く充分明るい内に戻れる事は分かっていた。しかし、その時の私には尾根に残雪が少なかったこともあり、山頂まで行くというモチベーションが湧いてこなかった。
私にとって山頂に立つ事は、目標であって目的では無く、私はそこまで行く過程を楽しむ事を目的としている。これはバイクのツーリングにも共通することなのだが、バイクの場合A地点からB地点に行く途中に楽しいことが沢山あるのであって、B地点に行くことだけが目的では無いのだ。B地点に行くのが目的だったら、私は迷わずエアコンの効いた車でB地点に行く。
そして私は結論を出した。寄る年波には勝てず毎年衰えていく脚の状態からして、此処で引き返す事にした。私は荷物を纏め、目の前に見える椈森山頂に未練を残しながらその場から引き返したのである。
和賀山塊を望む。一度登ってみたいと考えている山々。
雪が消え若葉が出る前の静かな椈の森。
角館町側に伸びる送電線。手前がNO.134、奧がNO.135鉄塔?
NO.134鉄塔からNO.133鉄塔を見る。
下って来た尾根の終点が此処。右手から沢が流れ込んでいる出合い。
作業道を下って沢まで降りた私であったが、まだ沢を渡る課題が残っていた。東北電力の皆さんはどのようにして渡っているかは知らないが、橋らしき物は見当たらなかった。しかし、対岸の斜面には林道から沢に下る道がらしき物があって、此処が渡渉地点で有ることは間違いなさそうだ。
右手からの沢が合流する地点手前に、流木に草木が纏わり着いている所があり、その木に乗って対岸にジャンプすれば何とか渡れそうであった。私はその木に乗ってみたのだが、ジワジワと木が沈んでいく。それでも足が水の中に浸かる程ではなく急いで対岸にジャンプしてギリギリ水際に着地、何とか濡れずに渡渉に成功した。しかしもう少し私の脚が長ければもっと楽に渡れた筈なのだが、旧人類体形の私としては致し方あるまい。
セローの所に戻った私は、ヘルメットとグローブを身に着けそのままの格好で唐松温泉に向かう。ここから唐松温泉までは10分も掛からないで行ける距離なのだ。
山に行く1週間位前、お客さんから唐松温泉の無料入浴券をもらっていたので、私はその無料券を持って唐松温泉に向かった。
唐松温泉の前ではテントが張られて何かイベントが行われていたようだが、皆さん撤収作業に忙しく動き回っていた。この温泉の前は幾度となく通過していたが、中に入るのは今回が初めてである。
カウンターに無料入浴券を出しロッカーの鍵をもらう。入浴料は500円のようで、無料券を戴いたK氏には本当に感謝である。今日は男湯と女湯が入れ替わっているそうで、脱衣所には男湯では通常見られ無い物を売っていて、ここが女湯であることを再認識した。
此処のお湯は無色透明のお湯<泉質:カルシウム、塩化物泉(低張性、アルカリ性、高温泉)>で特筆する特徴は無いお湯だったが、釜風呂(熱気浴)なるサウナのような蒸し風呂があって、ここの温泉の名物になっているらしい。私はサウナ系は苦手なので今回は遠慮させてもらった。
ボディソープで体の汗を流してから、温泉にユックリ浸かり今日山であった出来事を思い出す。残雪が少なく残雪の尾根歩きが出来なかったこと、椈森の山頂に立てなかったことが少し心残りではあったが、天気も良かったしヤブ山の春を満喫することが出来でいい山行きだったと思う。
温泉から上がり新しい下着に着替え、セローに乗って秋田に帰って来たのは4時過ぎ、今日の山行きは 無事終了した。
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