第2日目  9月21日(金)    上頓別⇒知駒⇒上間寒⇒日曹⇒浜頓別⇒猿払⇒宗谷岬

 中頓別の少し手前を左折して知駒峠に向かう。この道は大きく回り込むコーナーがつづく素晴らしいワインディングロードである。1999年の北海道の時にも通った道で、その時は峠を登るに連れて路面がウエットになり、仕舞いにはドシャ降りの雨に降られ散々な目に遭ったのだが、今日も麓から見上げる山には雲がかかっていて2年前の事が頭をかすめる。


 峠を登り始めると路面は雨上がりの様で日陰部分はウエットの部分が残っていたが、標高が上がるに連れて路面は完全なドライとなりどんどんバンク角が深くなっていく。M氏とK氏を前に出すと瞬く間に視界から消えていき、私は孤独な走行になるが景色を楽しみながら後を追う。

  シェルターを抜けたテレビ塔下のパーキングにバイクを停める。天候は晴れているが風は冷たく寒い。気温は10℃以下と思われ、K氏たまらず草むらに走る。スッキリとした顔で戻ってきたK氏は 大きく深く回り込むコーナーの連続に痛く感動した模様で、北海道の素晴らしさを興奮気味に熱く語っていた。



ミッシュラン パイロット スポーツのビバンダム君も
影が薄くなってしまう道



 我々が一服していると1台のMR2がやって来て、中から1人の30歳代と思われる男性が降り立ち我々には目もくれず無言のまま景色を眺め静かに走り去っていった。1人旅と思われるその男性もこの北海道の道を楽しみにやって来たと思われ、こんなマイナーな道を探して旅をしている姿に何か我々と同じ変人さを感じてしまう。

 知駒峠を一気に下り上間寒から日曹へ向かう。この道は出来てまだ間もなく路面状態も良く走りやすい中速のワインディングである。M氏がまず先行し、K氏が後を追うがM氏から少しづつ離れてしまう。このような道ではまだ実力の差が出てしまうのだろう。K氏には、今回の北海道の経験を生かしてステップアップを目指して欲しいものだ。

 豊富と浜頓別を結ぶ道道に出て浜頓別方向に右折する。予定は石炭別から宗谷丘陵沿いに小石方面に向かう予定であったが、道はまだ舗装されておらず予定を変更して浜頓別に出ることにする。浜頓別までの道は10年位前に通った頃から道路の改修工事が行われていたが、浜頓別側から始った工事が内陸部まで進んでいた。工事箇所の未舗装部分が雨で泥道になっていて滑りそうでスロー走行を強いられる。

 バイクは、ラジエターのコアーが泥で埋まってしまうほど泥パックされ見るに耐えない姿になっている。我慢の走行がつづくが、浜頓別に近づくに従って道路状況は良くなりスピードも上がる。

 浜頓別の少し手前の直線路左側に車が停まっていて1人の男性が柱に登って何やら作業をしているのが見えた。良く見ると車は警察車両で作業員は警察関係者の様であった。アッと思ったその時のスピードメーターの針は3桁以上を示しており、ブレーキを掛ける間もなくその前を通過してしまう。警察関係者も驚きの表情で我々を右から左に首を振って見送っただけであった。バックミラーに集中しながらゆっくりとスピードを落として浜頓別市街に入るが何事も起こらず町を通過する。

 国道238号に左折して直ぐバイクを路肩に停めここで雨具を脱ぐ。これから先はオホーツク海沿いの真直ぐな道を走って今晩の宿がある宗谷岬まで60km位の距離である。もう着いたも同然とチョッと安心する。

 宗谷岬に向かって走り始めて少しして前方に黒い厚い雲の塊が見えて来る。その雲の下では、明らかに雨が落ちているのが見え我々は確実にその雲に向かって進んでいる。雨具を脱いでしまった我々は雨具を着るかどうかの判断を迫られるが、この手の雨は一過性の場合が多いと判断そのまま雨の中に突っ込む。



 雨は思ったより強くなく雲の下を通過すると雨は上がった。雨は上がったがやたらと寒くなってきた。猿払町に有った温度表示板は8℃を示している。日中で8℃といえば秋田では11月初旬の寒い頃の気温だ。今はまだ9月下旬、さすがに北海道の北の外れは寒さが違う。堪らず猿払の道の駅で防寒用に雨具を着る。

 吐く息は白く、強く冷たい風が身にしみる。ここが日本の北の外れである事を実感する。






バイクは道路工事中の泥道走行で泥パックで厚化粧。息が白いのが分かるかな

 猿払をPM4:50出発し、今日の最終目的地宗谷岬を目指す。雨具のおかげで寒さはあまり感じなくなったが、空気が重い。気温が低いため空気密度が高くヘルメットに掛かる風圧が強く首に負担が掛かる。



 宗谷岬で夕日の沈むのを見たいと先を急ぐ。しかしはみだし禁止区間で車に追付いてしまい車の後に付いて走るが、この走りが何か心地よい。黄色線の終わるまでしばしの安息タイムを楽しむ。黄色線が白の破線に変わって一気にスピードアップ、宗谷岬に急ぐ。



 PM5:10、ギリギリ日没に間に合って宗谷岬に到着する。
 ここの気温は9℃、風も強くやはり寒い。










 K氏初めて日本最北端の地に立つ。ライダーはこのオブジェの前での写真が北海道に来た証となる。













 間宮林蔵とのツーショット写真はS氏に対抗してのこと?しかし林蔵と肩を組まないところがK氏のおくゆかしさか。
















 今日の宿は民宿 最北の宿。確かにこの辺の宿の中では一番北にある様に見える。

 写真撮影もソコソコに宿に駆け込む。この宿は以前泊まった事のある宿の2〜3軒隣にあり、1階がバイク置き場になっている造りも同じである。この辺りのスタンダードな民宿の形なのであろうか。

 1階の車庫のシャッターを開けバイクを滑り込ませた後荷物を降ろし二階の玄関に行くと一見その筋風のご主人が我々を出迎えてくれる。食事を先にするか風呂を先にするかをたずねられたが、我々は迷わず風呂が先と答える。部屋に入って着替えた我々は冷え切った体を温めるのが先と、宿の向かいにある最北の店(青い建物のお土産屋))から買ってきたビールで乾杯してまずは体の中から温める。一息ついたところで風呂に行く。





 風呂場に行くと30歳代と思しき男性と一緒になり話が弾む。熊本から来たと言うこの男性は、札幌に仕事(学校関係者と思われる)で来たのだが、この連休を利用してレンタカーで北海道を旅しているのだという。今朝札幌を発って深川から留萌に出て日本海沿いを北上し宗谷まで来たのだと言う。

 途中天塩からつづくサロベツの道路が印象的であったようで北海道の雄大さに感動していた。また道路に沿って建設された風力発電の風車の大きさ、規模の大きさにも驚いていたようであった。宿のお風呂での旅人との触れ合いもまた楽しいもので、知らない人と一緒になった時は出来るだけ話し掛ける様に努めている。




 体も温まりいよいよ夕食の時間となった。今日の宿をこの最北の宿にした最大の理由は夕食のメニューにあった。この宿の夕食の売りはタコシャブでそのタコシャブなる物を食べるためにこの宿に来たのである。

 テーブルの上に並んだおかずはタコシャブをはじめ北海道特産の海産物が所狭しと並べられており種類は多い。この感じは、以前泊まった2〜3軒隣の宿や稚内寄りにある亜留芽利亜と似ている。この手のおかずは色々食べられて良いのだがインパクトが薄く、後で思い出した時の印象が薄くなってしまう事が多い。今回はやはりタコシャブに期待である。


 ここでタコシャブなる料理を説明しておこう。簡単に言えば肉の変わりにタコをシャブシャブなのだが、そのタコに仕掛けがあって地元で採れる大きなタコの足を凍らせ薄く斜めにスライスしてそれをシャブシャブする。

 スライスされたタコの大きさは縦・横・厚さ10cm×6cm×0.3cm位の楕円形で、それを鍋でシャブシャブするとアッという間に4cm位の大きさに縮んでしまう。それを味噌だれに付けて召し上がる訳である。これがタコシャブ料理の全てである。この料理凍ったタコ足のスライスが一瞬にして縮むのを目で楽しむ料理と見た。味は茹蛸の刺身の方が美味しいと思うし、シャブシャブなら牛肉の方が美味しいと思うからである。しかしタコのスライスが一瞬にして縮む様は一見に値するある種の感動がある事も確かで、あんな大きかったタコが小さくなる様は何か損をした感じがあって、大きいままで食べてみたいと思う瞬間でもある。


 どちらかと言うと早飯の私と対照的にK氏はじっくりと時間を掛けて食事するタイプで、おかずの食べ方もそれぞれを平等に食べていく。当然ご飯は山盛りでお代わりを繰り返し、お櫃は直ぐに空になりお代わりを請求する。いくら米は買わなくても良い農家の倅とはいえ良く食べる。それでいて痩せているのだから無駄飯食いと言う事か? FUNKYの歴史の中でお櫃のお代わりを請求した人間は、私の息子のT氏につづき2人目である。

 若人は良く食べ、良く眠る。年寄りは早飯、早起き。

 食事を終わって部屋に戻り、今日撮ったビデオを再生し今日の走りを振り返る。K氏も北海道の走りにも少しづつ慣れて来たようで、明日の走りを楽しみに床に就く。



民宿 最北の宿 〒098-6752 稚内市宗谷村大岬  TEL0162-76-2408 1泊2食付8,000円(消費税別)

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