第五日目  9月24日(月)  幌加温泉⇒三国峠⇒大雪ダム⇒三国峠⇒幌加温泉  

 北海道最終日も年寄りの朝は早く、AM6:00頃朝風呂に入るため一階に下りて行くと玄関の暗がりに2人の男性が静かに座っていた。こんなに朝早くから何をしているのか不思議に思ったが風呂に行く。風呂から上がって玄関に行くとまだ2人の男性はうつむいて座っていた。

 朝食までの時間を利用して沢沿いにあるという無料の露天風呂を見に外に出る。露天風呂は自炊棟裏の河原に岩を利用して造られていていた。現在日本1周中の朋ちゃんも入ったというその露天風呂は周りには脱衣所も何にもなく、ただ脱いだ服を掛けるには丁度良さそうな枯れ木が立ててあるだけ、この露天風呂に入ったという朋ちゃんの度胸の良さに感服する。私が女性だったら入るのをチョッと遠慮したい露天風呂である。

 その帰りにお犬様と朝の散歩中の親父さんに会う。親父さんに露天風呂の事を聞くと、あの露天風呂は幌加温泉のお湯を引いて親父さんが管理しているそうで、時々掃除などを行っているが最近の利用者は使いぱなしで汚したまま帰る人が多く困っているという。以前は掃除をしていく人もいたが今は少なくなったそうです。無料であるからこそ守らなければならないマナーがある事を考えさせられた。

 そういえば昨日宿に着いた時、玄関先で露天風呂に入った人が下の駐車場に泊まらせてくれと親父さんに頼み込んでいたが、親父さんは泊まるならキャンプ場に行って泊まってくれと言って断っていたのを思い出す。以前は泊まらせた事もあったそうだが、周りに排泄物やゴミを散らかしたまま立ち去る人が多く今は断っているという。マナーの悪さが善意の人々に与える悪影響を、一人一人が真剣に自覚しなければならないことをつくづくと思う。


 親父さんから玄関にいた2人の男性の話を聞く。あの2人はこの近くにある山に登る予定だった登山者で、山に登るためまだ暗い内に車で林道に入り通行止の柵で行く手を遮られたが寄せて先に進んだところ、その先の橋が先日の大雨で流されていたのを分からず車ごと川にダイビングしてしまった。幸い2人に大きな怪我は無かったが車は川の底で走行不能になり助けを求めて幌加温泉に来たが、レッカー会社に連絡をとるにはまだ朝早いため時間になるまで待っているのだと言う。

 どおりで元気無そうに座っていた訳である。北海道の道では道路工事の看板が有れば必ず工事はしているし、通行止めの柵が有れば必ず先に何か有る。それにしても川と道路の段差は2m以上有るとのことで引き揚げにはユニックが必要であろうとの事。落ちた車がレッカーサービス付きの車両保険に入っている事を損保代理店の端くれとして祈るばかりである。親父さんは、通行止めの柵は最初は鎖で固定されていたはずだが何者かによって外されていた様だと言っていた。ここでも自分勝手な人間の行動が悲劇を生んでしまったようである。













 この幌加温泉は国有林の中に建っているため土地の所有者は営林署であるようだ。温泉は洗面所前の庭?から出ていて温泉に合わせて建てられた宿であることが分かる。2種類の違った温泉が10mも離れていない所から噴出しているのは何とも不思議である。


 幌加温泉は最初下にある自炊棟が建てられその後にこの幌加温泉の建物が建てられたそうで、最初は昔この近くにあった鉱山で働く人たちの保養施設として使用されていたそうである。












 部屋に帰るとM氏が起きて目覚めの一服。その恍惚の表情を見る時この男死ぬまでタバコは止めないと確信する。



 一方、K氏はまだ夢の中で起きる気配も無いがココは心を鬼にして叩き起こすと、よほど夢見が良かったのか爽やかな表情でK氏は目覚める。

 K氏は夜明け前トイレに起きて、寝る前に私から聞いた星空が綺麗だったと言う話を思い出し星を見に外に出たが、空が少し白み始めていて星の数は少な目であったと言う。それからまた寝たため熟睡していたようだ。朝方の一寝は本当に気持ちがいいもの、無理やり起して申し訳ない気がしたが今日の予定は結構タイトであるし何が起きるか分からない。時間的な余裕は持っておきたいのだ。








 朝食は全員ほとんどの物を平らげた。朝食をこんなにしっかり食べるのは北海道に来た時ぐらいのものだ。







 朝食を終え早速出発の準備に取り掛かる。荷物をまとめトイレに行きそれから帳場に行って宿代を精算する。親父さんに三国峠まで行ってまた戻って来るので、それまで荷物を置かせてくれるようにお願いする。親父さんはそれなら荷物を部屋に置いていっても良いと言ってくれた。

 出発前に各車のドライブチェーンにオイルをやる。リヤタイヤを浮かしてK氏がタイヤを回し私がチェーンオイルを吹くが、M氏のマルケジーニ製マグホイールの回りが重いとK氏が言う。軽いマグホイールなのに? その場はそれで終わってしまったのだが、回りの重い原因は秋田に帰って来てから解明されたが、その時その原因を知らなかったことが良かったのか悪かったのかの判断は今しかねる。しかし、何事も無く帰って来た事だけは事実であるが。

 R6のオイル漏れが止まっていることを願いつつエンジンを掛け出発しようとするが、M氏の耐久仕様750SPのエンジンが掛からない。M氏は一昨日のアクシデントでスターターレバーが使用出来ないものと思っていて(本当は使用可能であったが)スターターを使っていなかったためかプラグをかぶらせてしまったようである。FCRキャブレターは加速ポンプが付いているためアクセルをあおる事により燃焼室に生ガスを送り込めるので、市販のレース用FCRにはスターターは付いていない。

 このエンジンの走行距離は40,000km近くになっていて大分やつれて来ているのも事実で、このような標高の高い空気の薄い所では圧縮の落ちたエンジンは始動性が悪くなる事が良くあり、一昨年のFZR400RRもそうであった。そこで幌加温泉の強制始動装置を使用して私が始動を試みる。一つ目の坂を使っても始動しないため、右に転回して二つ目の坂で再トライしアクセルを全開にして空気を大量に燃焼室に送り込むと坂が終わろうとする頃ようやくパラパラと来る。

 ここは絶対にエンジンを止められないとそのまま国道まで走ってエンジンを暖める。国道でUターンして戻って来るとM氏とK氏が心配して追って来ていた。そのまま自炊棟の駐車場まで走って後続を待ち、M氏とバイクを交替する。エンジンが暖まってしまえば後は問題ないと思われる。M氏は私の乗っている750SPのエンジンのピックアップの良さに感心していた。こちらのエンジンの走行距離はまだ12,000km位で元気が良いのと、ギヤリングが低いので加速がいいと感じたのであろう。

 国道に出て左折し三国峠に向かう。この道は往復するため帰りの事を考えて道路状況を確認しながら走る。三股の部落を過ぎて三国峠の登りに差し掛かり大きな高速コーナーが現われるが車がいて我慢の走行を強いられる。ようやく車をパスしてペースを上げる。高速コーナーを幾つか楽しんでミラーを見るとR6が遅れているのが見える。 駄目だったか! ペースを落として三国峠まで行く事にする。


 三国峠のパーキングにバイクを停めR6のマグネットカバーを見るとガムテープの間からオイルが滲み出ている。触って見るとシリコンのコーキング材はプヨプヨしてまだ固まっていないのが分かる。ここまで来てこの道をスロー走行しても楽しくはない。ここで一つの決断をしてこの道を走るのが始めてのK氏に私の750SPに乗ってもらい、大雪ダムまでの往復をM氏と共におもっきり走ってもらう事にして、その間私がR6の処置をすることにする。



 2台の750SPを送り出してからR6をどうするか考えるが、本格的な処置は幌加温泉に戻ってからする事にしてそれまでの処置を考える。今オイルが漏れ出すのは止められないので、考え方を変えて漏れ出したオイルが走行に支障が無いようにする方法を考える。そこでダイナモカバーのオイルが漏れている所にウエスを巻いて漏れたオイルが飛び散らないようにする。これで走行には差し当たり支障は無いだろう。





 2台が戻って来るのを温かい缶コーヒーを飲みながら待っていると釧路ナンバーのXV1100ビラーゴに乗った中年のライダーがR6の横にバイクを停める。2泊3日で道内を走って来たこの男性は、これから上士幌から足寄、本別を通り二股を経て白糠に抜けるFUNKYがよく利用するコースで釧路に帰るそうで、しばらく話をしてから糠平に向かって峠を下っていった。アメリカンに乗って一人北海道を旅をする。私にそういう時が来るかどうかは分からないが、多分来ないと思う。



 2台のマゼンダツインズが帰って来た。今日は連休最終日のせいか車が多く走りずらかったようだが、K氏もここの道を楽しめたようで良かった。幌加温泉までもK氏に750SPに乗ってもらうことにする。K氏は750SPのフロントブレーキがえらく気に入った様で高速で指1本で思うがままにコントロール出来る事に驚いていた。このフロントブレーキは、750SPに標準装着の住友電工製の重く不細工な6ポットキャリパーを捨てて、同じく住友電工製のR1用モノブロック4ポットキャリパーに換えローターも320φのXJR1100に交換したした物で、M氏の750SPで実績のある効き、コントロール性共に素晴らしいスペシャルスペックのフロントブレーキである。当然ブレーキパッドもスペシャルな物が装着されている。



 ここでお約束の看板の前で記念撮影をして景色を楽しむ。













 三国峠からは大雪の山々と原生林の雄大な展望を堪能できる。

 今回幌加温泉までマゼンダツインズと別行動になるため、いつも通過するだけの松見大橋(今回初めて名称を知った。)の写真を撮ることにして2台より早く出発する。じっくりと橋の景色を見ると原生林の中の橋は美しい曲線を描いて架けられていて上手に自然の景色に調和している様に見える。景色との調和を考えたかどうかは知らないが、直線の橋を造らなかった建設省の道路設計者に拍手を送りたい。









   マゼンダツインズ 松見大橋を渡る。











 マゼンダツインズが松見大橋を渡る写真を撮ってから2台を追うが、こちらはスピードを上げる事もままならずゆっくりとしたペースで走る。この道をこんなにゆっくり走るのは初めてで、高速コーナーに見えていた道をほとんどバンクしないで走れる事や道の両側に広がる白樺の森が結構長く続いている事などがわかった。陸送中のR6であるが、このスピードで走っていても車体・ハンドリングの軽さは特筆もので素晴らしいことが分かる。しかもふらふらする軽さではなく安定感も兼ね備えているからこれは反則である。R1とはまた違った現代のバイク性能を垣間見た気がした。次はラムエアーが効くスピードレンジで試乗して見たいものである。しかしフロントブレーキだけはいただけない。ブレーキパッドを換えて少しは良くなったとK氏は言うが、効き・タッチ共使えないもので改良の必要を強く感じた。


 ゆっくりと景色を楽しみながら走って幌加温泉玄関前のピットにすべり込むと、親父さんとM&K氏が待ち構えていて早速R6のアンダーカウル取り外しに掛かる。マグネットカバーに巻いたウエスはオイルの飛散を防いでおり効果が有る事を確認する。


 今度の修理方法は今までの経験を活かして、ガムテープを剥がしオイルとコーキング材をガソリンで綺麗にしてから、コーキング材を今度は薄く塗りその上からガムテープを張る。今度は漏れてくるであろうオイルを吸収させるためガムテープの上にウエスを巻き、その上からまたガムテープを貼る方法をとった。



 このオムツスタイルの修理方法は完璧で、秋田に帰って来てもオイルが外に漏れ出す気配すら無かったのである。今度漏れた場合、パンパースかエリス・ウィスパーを購入と言う話が出ていたのだが。

 エンジンオイルを補給してR6の修理は完了し、荷物を積んで出発の支度をする。

















 支度を終え、親父さんと写真を撮り、また撮ってもらい来年また会えることを楽しみにAM10:55幌加温泉を出発する。玄関前の坂を下りた所でM氏が来るのを待っていると紺色のゴルフに乗った年配の男性が話し掛けて来る。自分もバイクに乗って旅をしたいのだがあれが居るしと車の中に視線をやる。中には奥様と思しき女性が乗っていてこちらをジーッとは見ている。いくら年取っても奥様を第一に考えるのが夫婦円満の秘訣のようであるが、私にそれが実践出来るかどうかは不明である。

 国道に出て右折して糠平に向かう。今度はいつのもペースで走りR6のデジタルメーターは○60を表示したりして、いつの間にか糠平に到着、右折して然別湖に向かう。


                                                                        NEXT

露天風呂の詳細はこの写真をクリック

この枝に服を掛ける。

この二人が落ちてしまった方々