9月14日(日) 4日目 網走⇒根北峠⇒開陽台⇒裏摩周⇒津別峠⇒芽登⇒ナイタイ⇒糠平⇒幌加温泉(泊)


 6時前には起床し、台風の動きが気になり下に降りてテレビを点ける。天気情報によると、台風は日本海岸沿いに北上し宗谷海峡を通過してオホーツク海に出たようで、北海道には上陸しなかった模様である。

 部屋から見える外の様子は雲の動きは速いが青空が出ており、今日の天気は良さそうである。雲の動く方向も昨日とは反対方向でで西から東に流れていて、台風が通り過ぎたのが判った。台風の影響が昨日の一日で済めば御の字である。残りの2日間が晴れる事を願うばかりである。














 ここで我々が泊まった部屋をご紹介しておこう。今回アニマの里では、ソーラーシステムのパネルを載せるために南向きの大きな屋根を造ったのだが、その下のスペースを有効利用するために造られたのが我々の泊まった部屋(隣にもう1室ある。)なのである。ロフトの窓は普通日当たりの良い南側に取り付けるのだが、この部屋はソーラーパネルを載せる屋根と言う特殊事情のため、ロフトの窓は日差しが入らない北側に付けられている。寝る場所と寛ぐ場所が分かれているため、泊まる人間としては使い易い部屋であった。



 寝起きの悪いのは若い人特徴?でも無いと思うが、今日はK氏の寝起きが悪い。私に起されて下に降りては来たが、チョッと目を離すと床に転がっている。ゲストルームに行っても欠伸が止まらない。北海道3日目ともなれば疲れが溜まってきているのだろう。




 ここゲストルームからは、窓越しに草原の中にいる馬や羊が眺められ、居ながらにして朝の長閑で爽やかな牧場の雰囲気を感じられる場所なのである。昨晩の彼女が独りで散策しているのが見える。女性の独り旅には何故か意味深なものを感じてしまうのは私だけだろうか。

 ここの朝食は7時半頃からで、それまで昨晩のお喋りなおじさんと話をしたりして時間を過ごす。このおじさん、生まれは本州だそうで北海道に来てから各地を移りすんだ末、函館に落ち着いたそうである。函館は住み易くお気に入りであるようだ。

 現在はリタイヤしてを奥様と各地の山を登ったり、旅行して回っていると言う結構なご身分であるようだ。私がそう遠くない将来、このおじさんと同じ年になった時、その様なご身分にはなっていないような気がする。


 朝食の時間になり食堂に行く。今日の朝食メニューはパン食で牛乳、コーヒー、目玉焼き、ヨーグルト等がテーブルにならんでいる。


 このの特製ヨーグルトにはアセロラのジャム?(アセロラであった確信は無いです。)が入っていてこれがまた美味しい。他ではお目に掛からないヨーグルトの味であった







 昨日の夕食に出すのを忘れたと言う、ゆでトウモロコシが出てきた。ここで作った採れたてのトウモロコシは、プリプリで粒がハチ切れそうである。これがまた甘くて美味かった。FUNKYでは神居古澤のトウモロコシが定番だが、今回のトウモロコシはそれよりも美味かったかもしれない。





 今回我々のテーブルは窓際ではなかったが、ここでの朝食メニューの中に、外の景色と言うのがある。牧場の景色を眺めながらの朝食は、普段では味わえないものでアニマの里の良い思い出となり、ここの売りの一つだと私は思う。

 食事を終え出発の支度をするため外に出ると、朝食を終えた2匹の犬達ものんびりと日向ぼっこをしている。この犬達、毎年会う度に年を取っているのが感じられる。犬は人間より5倍のスピードで老いていくと言うが、確かにこの犬達の老いの速さは私の一年の老いのスピードより速いように思られる。





 草の上に置いていたバイク達は、台風の影響も受けずそのままの姿で立っていた。昨日の雨ですっかりオイル気の無くなったドライブチェーンにオイルを吹きつけ、荷物積んで出発の準備をする。




 支度を終え旦那と奥様に出発の挨拶をする。奥様が「今日はどこに泊まるんですか?」とを聞いてくる。「幌加温泉です。」と答えると、奥様は「幌加温泉ですかー?」と確認してくる。「幌加温泉には2軒宿が有って下の方にある宿です。」と答えると、どうも奥様は行った事が有りそうな口振りである。そして幌加温泉のおばさんにあまり良い印象をお持ちで無いようだった。

 どういう形でおばさんが応対したのかは聞かなかったが、私達には良くしてくれる幌加温泉の親父さんやおばさんも愛想は良くない方(私達に対しても)なので、人によっては悪い印象を与えてしまう事を私は知っている。幌加温泉はアニマの里とはまた違った温かさを持つ宿なのだが、私もそうだったがその温かさを知るのには多少の時間が必要なのだろう。

 ここでFUNKYの北海道の宿について考えて見たい。FUNKYが宿に泊まる場合幾つかの条件が考えられる。


  @宿泊料金が5,000〜8,000円前後
  A食事が旨い。
  B部屋、寝具が小奇麗で(新しくなくても良い。)、ゆっくり寝る事ができる。
  C風呂がゆっくり入れる。出来れば温泉。
  D全館禁煙で無い事。
  E宿の人が気が置けない人で、リラックスして休養が取れる環境である事。
  Fトイレが臭くない。
  G部屋にテレビが置いてある。(天気予報が見たい。)

 このような条件の中で、網走市のアニマの里、上士幌町の幌加温泉がFUNKYの定宿として決ってきた。選考の最大のポイントは、宿の人の人柄に有る。設備や環境も有るがやはり人である。設備は毎年毎年古くなっていくが、人は毎年会う度に新しい発見が有ってまた会いたくなる。宿の犬にも会いたくなるが。

 そして一日は新しい宿に泊まる事にしている。北海道には沢山の宿が有り、初めての宿に泊まる事もまた楽しみの一つなのである。


 バイクの所に戻り、お約束のアニマの里の看板の前で写真を撮ろうとしていたら、昨晩の女性三人がやって来たので「一緒に写真を撮りませんか。」と誘ってみた。最初は遠慮していた御三人さんであったが、撮った写真はインターネットのホームページに載せますからと言うと、積極的に写真に収まる御三人さんであった。

 奄美の先生達は十勝川温泉まで網走駅でレンタカーを借りて行くそうで、名古屋の女性が駅まで車で送って行く事になったようだ。三人は我々より先にアニマの里を出発して行った。

 8時45分、我々も彼女らに少し遅れてアニマの里を出発する。これから向かう根北峠、開陽台、裏摩周のコースは、FUNKYの定番コースで、K氏は今回初めて走るコースだ。

 本来ならば一昨年に来た時走っていた筈のコースであったが、前日のアクシデントで壊れてしまったバイクをアニマの里で修理したため根北峠に行く時間がなくなり、宿の幌加温泉に直行したため前回は走れなかったコースなのだ。K氏にとってリベンジとなる根北峠に向かう。


 網走の町を抜け港の横を走る片側2車線の左車線を走っていて車の後に着いて信号で止まっていたら、CB400スーパーフォア(本州ナンバー、ライダーは若そう。)が車と車の間をすり抜け停止線の前まで出て止まった。

 それを見て私はカチンときてしまった。渋滞でも無く、ほんの2〜3台先の停止線に出るために狭い車と車の間を抜けて先に出る。こんな奴がいるからドライバーのバイクに対する偏見が増すのだと思ったら、信号が青に変わったらCBを追い掛けていた。走り出したら大したスピードで走るわけでもないCBにまたカチン。急いでいないなら、「すり抜けなどするナー!」と怒鳴りつけたい気持であった。その後、CBを抜き去ったのは言うまでもない?

 最近、歳のせいか些細な事が気になって口を出してしまう事(昔からその傾向は有ったが。)が多くなった。そんな事は自分が我慢して黙っていれば済む話なのだが、つい言ってしまうのである。自分が我慢するのがイヤ(結構、我慢強い方だと自分では思っているのだが?)で言うのではなく、ここで言っておいた方が相手の将来(将来の無い人、どうでもよい人には何も言わない。)のためになるだろうと自分勝手に思って、つい口に出してしまうのである。

 相手との人間関係を考えたら何も言わない方が波風も立たずに済む話なのだが、世の中にはこんな風に考える人間もいると言う事を知らせる事が年寄りの役目なのだと考えての事なのだが、相手に言わせれば余計なお世話となっている事だろう。


 私が幼い頃、近所の子供達の悪戯にいつも怒っているガミガミ親父と呼ばれる年寄りが町内に居た。私もその悪ガキの1人であったのだが、怒られたからといって悪戯を止めるわけではなく、怒られると「ガミガミ親父・・・!」と叫びながら逃げ回っていた。そしてガミガミ親父が怒るのが面白くてまた悪戯を繰り返していた。

 しかし、今考えてみるとガミガミ親父に怒られた時、悪い事をしているだと言う意識が有って悪戯をしていたように思う。人は他人に言われる事で初めて意識する事が有ると私は思う。私もそのガミガミ親父の歳に近くなり、ガミガミ親父の気持が判るのようになってきたような気がする。


 根北峠の前に斜里でガソリンを給油するのがお約束なのだが、国道沿いのいつものGSがお休みで、それではと昨年行った近くのGSに行くとそこもお休み。結局、斜里の街中まで行ってようやく給油する事が出来た。確か国道沿いで1ヵ所開いていた所が有ったから、来年は斜里に入ったら開いている所に直ぐに入るようにしようと思う。

 これで準備は整い、R244の根北峠に向かう。越川温泉を過ぎハミ禁の黄線が途切れるとその幕は切って落とされた。私、M氏、K氏の順でそれは始った。これまで20回以上走っているこの峠のレイアウトは大体は頭に入っている。一気に加速して先行逃げ切りを図るTZR。それを追う750SPとR6であったがR6が徐々に遅れ始める。R6は初めてのコースに戸惑っているようだ。750SPも逃げるTZRを追うが一旦離れた間隔はなかなか縮まらない。

 登りの後半部分はコーナーがきつくなりスピードが落ちるが、そうなると益々TZRが有利になり後続との間隔が開いていく。TZRは峠の頂上付近で後続を待つ余裕を見せ、根北峠後半戦に入る

 後半戦は下りの高速コーナーで始る。以前はハミ禁の黄線が解除されると超高速ステージが始まる目印となっていたが、昨年あたりにその黄線が無くなってしまい少し戸惑ってしまった。そして超高速ステージは始った。これから先はTZRに出番は無く、タダタダ12,000rpmに張り付いたタコ-メーターを見つめているだけでする事は無い。決めていた通りR6を先頭に一気にペースアップ、750SPがそれに続く。2台は次第に点になって行く。

 R6は初めてのコースに戸惑いながら走っていたが、ペースダウンする場所を勘違いしてしまい予定より手前でスピードダウン、そのため途中から私が先頭に立って開陽台への道に右折する。



 今回は開陽台初体験のK氏のために、有名な直線にバイクを停め写真撮影を行う。以前ここで写真を撮った事はあったと思うが、いつだったか思い出せない程昔の事で、少なくても十数年ぶりであったはずである。

 8月と違って止まっているバイクも少なく撮影はし易かったが、いつもは順番待ちの時もあるメジャーな撮影ポイントである。



 開陽台の駐車場には結構バイクも止まっていてたが、車も含めて人出は昨年より少ないようである。昨年は9月後半の秋分の日の連休を利用して北海道に来ていたが、紅葉が始る9月後半の連休の方が人出は多いのだろう。


 昨年は駐車場で休憩して展望台まで行かなかったが、今年はK氏と共に展望台まで行ってみる。FUNKYの中で「畜生 階段」(Y嬢が名付け親)と呼ばれる階段はリニューアルされ立派な「NEW 畜生階段」となっていたが、我々はそこを登って展望台に行く。

 展望台の階段でM氏を痛恨のアクシデントが襲う。M氏、手に持っていたデジカメを落としてしまった。カメラは階段をトントンと転がって止まった。慌てて拾い上げたM氏であったが、幸いにもソフトケースに入っていたためダメージは無かった模様で、電池をセットし直して電源を入れたら普通に作動してまずは一安心する。

 M氏の商売道具でもあるこのデジカメ、壊れたら一大事であった。 私も使用しているこのオリンパスのデジカメ(C-700 Ultra Zoom)は、私がバイクから落とした時も無傷(この時もソフトケースに入っていた。)であったし、結構打たれ強いかのしれない。




 私とM氏にとっては見慣れた開陽台の展望であったが、K氏にとってはこれが最初の開陽台。360度の展望に感動?していたかどうかは判らないが、今日は天気が良く地球の丸さを感じられるほど見通しが良かったのは幸いであった。






 ベンチに座りながらK氏に、根北峠の感想を聞いてみる。さすがに初めての道に戸惑ったようで、前2台の速さには着いて行けなったようだ。次回からは今回のような事にはならない事だろう。

 開陽台を発って清里峠に向かう。清里峠は緩やかな峠でスピードが出るため2人に先に行ってもらう。峠のシェルターを抜け左折すると裏摩周の展望台に行く道で、ここは短いが楽しいワインディングである。ここで私が先頭になり上の駐車場まで駆け上がる。今までになくコーナーにスムーズに入って行けて、何だかワインディングが楽しくなってきた。



 駐車場にバイクを止めると我々を追うように旭川ナンバーの大型バイク軍団が入って来た。中にはレーシングスーツを着たライダー(年齢は40歳前後?最近、革のツナギを着る年齢は高い傾向にある。しかも、この人は昔のツナギではなく新しいタイチのツナギを着ていたところが珍しい。バイクはZX−12R)や髪の長いライダー(最初に見た時は女性だと思った。バイクはCB750F)などもいてツーリングクラブのようである。

 どうせならここまでのワインディングでお手合わせ?願いたいところであったが、何故かこの手のライダーに道路上ではお目に掛かる事が少ないFUNKYなのでる。



 今日は車で駐車場は満杯状態で展望台も混雑していたため、ここが初めてのK氏の記念写真を撮って早々に退散する。

 清里峠から緑方向に下っていくと、ここがまた中速のコーナーが連続する道でTZRで走ると結構楽しい。途中、左手の林道から車が出て来ようとしているのが見えたが、その道の奥には摩周湖の伏流水が湧くと言う神の子池が有りそうである。

 緑の駅前を抜け左折、R391に出て川湯に向かう。川湯から屈斜路湖畔を走ってR243にぶつかる信号の所に在るGSで給油する。ここに来る前にM氏のYZF750SPのオイルランプが時々点灯していたというのでオイル窓を点検すると、オイルは下限の線を切っていた。

 今回、R6のK氏が最近オイルの消費量が多いと言う事でエンジンオイルを1本持参して来ていて、それをM氏が貰って入れる事にする。実は一昨年に来た時はM氏がオイルを持っていて、クランクケースカバーを割ったK氏にそのオイルを分けて上げた事があって、今回は立場が逆になったわけである。

 GSのおじさん(見るからにアイヌの血を引くと思われる優しそうなおじさんでした。)に22mmのメガネレンチを借りて、YZF750SPのオイル注入孔プラグを外してオイルを入れる。私が作業している間、M氏はGSのおじさんと話が弾んでいたようで、M氏どことなくおじさんと親近感が有ったのかもしれない。このオイル補充と言う作業が、この後また新たなドラマを生む事になろうとは・・・。



 GSを出た我々は屈斜路プリンスの前を通り過ぎて直ぐ左に入り津別峠に向かう。この道は昨年来た時と比べると最初の部分が広くなってはいたが、相変わらずセンターラインの無い狭い道のへアーピンカーブが連続くする。この手の道が苦手なK氏はジリジリと前の2台から遅れていく。

 昨年も訪れていた津別峠の展望台に12時40分に到着。今年は台風の影響からか天気は良かったが風が強かった。昨年は湖の上だけ晴れているような天気で今日のように良く晴れてはいなかった。そのため昨年とはまた違った景色を屈斜路湖は我々に見せてくれたのである。

 我々の後にやって来たライダー三人組(男2人、女1人)が、屈斜路湖をバックにセルフタイマーで記念写真を撮ろうと柵の杭の上にカメラを載せ、すました顔をしてシャターが切れるのを待っていた。しかしその時、突風が吹き抜けカメラは飛ばされ地面に落下してしまった。



 カメラは壊れなかったようだが、御三人さんは困った顔をして立ち尽くしている。それを見ていて知らぬ顔も出来ないと、私が出て行ってシャッターを押してやる。人助けは気持が良いものである。

 時間も1時を回り腹が減ってきた。昨年はこの下のホテルで昼食としたが、今回はここの食堂で昼食にする。ここのメニューはそばうどんがメインでサイドメニューとしてジャガイモ餅カボチャ餅があった。




 私とM氏はそばを注文。K氏はジャガイモ餅カボチャ餅が気になったようでそれを注文した。我々が食べたそばは普通の食堂のそばであったが、K氏の食べた餅はK氏の北海道の思い出に残る物であったらしい。

 ここの食堂は年配のご夫婦が切盛りされていて、その御夫婦の温かい気持が伝わってくる食堂であった。

 駐車場に戻って見ると、先ほどの御三人の物と思われるバイクが3台停まっていた。女性の物と思われる250ビラーゴ、XJR400R、そして私と同じTZR250Rのコンバットチャンバー仕様であった。チャンバーのテールからは黒いオイルが垂れ、そしてタイヤのサイドは両側3cm近く余っている。このTZR、性能の50%も出していないかもしれない。

 昨年私はスズキのRF400Rで来たのだが、その時も赤いRF400Rが停まっていた。私がここを訪れる時は、私と同じバイクが停まっていると言う巡り合わせが有るようだ。

 1時20分津別峠を出発、峠を下り始める。この道も狭い曲がりくねった道で忙しいのだが、TZRで走っていると楽しくなって来る。後ろを見ないで走りに集中していたら、後ろをおいて来てしまったようだ。峠を下ったT字路で後ろを待っていたら、M氏は少し、K氏は暫く待ってやって来た。ここから津別までの平らな道も、コーナーを思い通りのラインで走る事ができ、これまた夢中で走ってしまった。

 どうもこの楽しさは今回初めて履いた RENNSPORTタイヤ からきているようだ。このタイヤ、寝かし込みは軽くバンクするとピタリと安定する。しかし、そのバンク角から寝かすも起すも容易なところが不思議なタイヤなのである。バンク時安定するタイヤは、その安定感からそこからのライン変更が重いのが普通だ。しかしこのタイヤは違っていた。


 バンク時のその状態の安定感は、体が宙に浮いて空中に留まっている感じで今まで感じた事が無い感覚なのである。体が宙に浮いて安定している状態だから、そこからのバンク角の変更は自在で容易なのだと思う。そのためコーナーリング中の気持に余裕が出来て、路面状況やラインが手に取る様に判り冷静な判断・操作が可能になる。安心感が有るからアクセルも早く開ける事が出来るし、結果コーナーリングスピードが上がると思われる。

 コーナーを早く走る事が出来るRENNSPORTタイヤだが、このタイヤの最大の美点は<コーナーを楽しく走れる。 事に有ると思う。夢中になってコーナーを楽しんでしまうタイヤが METZELER RENNSPORT なのである。皆さんも騙されたと思ってMETZELER RENNSPOTを一回試して見てはどうでしょうか。絶対にコーナーが楽しくなると思いますよ。保証は致しませんが。

 津別からR240を南下、本岐から陸別に向かい、陸別からR242を更に南下し足寄方向に向かう。塩幌近くから清水谷方向と言う道路標示版に従って右折し芽登に向かう。この道は昨年も走っていて牧草地の中を走る楽しそうな道であったのだが、その時は天候が悪く路面はハーフウエットで思いっきり走れなかった。しかし、今年は天気も良く路面もドライで景色を楽しみながら良いペースで走っていた。

 西に面した斜面を斜めに下って行くと、道路一面に緑の葉っぱが敷き詰められた状態に出くわす。それは何とも不思議な状況であった。枯葉が敷き詰められた道路は秋になれば良く見られるが、緑の葉が敷き詰められた道を走ったのは初めてである。秋田には出羽グリーンロードという広域農道が有るが、正にグリーンロード状態であった。どのようにしてグリーンロードが出現したのか不思議に思ったが、その時は緑の葉っぱに乗って転倒しないように減速するのが精一杯であった。グリーンロードが何故出現したのかは、その後幌加温泉に着いて親父さんとの話の中で明らかにされる事になる。

 津別峠から1時間10分の一気走りで、芽登のパーキングに午後2時半頃到着する。一昨年もこの3人でここに来たが、その時はK氏のR6がここに来る途中でアクシデントで割れたクランクケースカバーからオイルが洩れ、ブーツやタイヤがオイルまみれになってしまい、その修理をここのパーキングで行ったのであった。

 私がトイレに行っている間にK氏はR6のエンジンオイル量を点検、オイルが減っているのを見たK氏は持って来たオイルを補充する。トイレから出て来た私は、オイルの量を点検しているK氏とR6を何となく見ていたのだが・・・・。オイルに何かと縁がある芽登パーキングの出来事であった。



 パーキングを出発った我々は、上士幌町のナイタイ高原牧場に向かう。ナイタイ牧場は山全体が牧場となっている大きな牧場で、牧草地の中を走る道は美しい弧を描きながら山の中腹にあるレストランまで続いている。

 景色を楽しみながらレストランに向かって登って行くと、ミラーに写るK氏が大きく遅れているのが見える。しかし止まるでもなく遅れながらも走って付いて来る。ガソリンはまだ有るはずだし、走っているのだからまず駐車場まで行く事にする。





 我々から暫く送れて駐車場に入って来たK氏とR6は、とんでもない状態でやって来た。それは正しく2年前の再現で、再現ビデオを見ているようなK氏とR6の姿に、しばし私は言葉を失ってしまったのである。

 オイルまみれのリヤタイヤそしてブーツと革ツナギのワックスを塗ったようなツヤツヤと輝きと言いい、それは2年前に見た状況(左足と右足の違いはあったが。)と全く同じようであった。転倒してクランクケースが割れたわけでもないのにこの状態は何なんだ。一瞬何が起きたのか頭の中が真っ白になった私であったが、K氏が指差す先を見て納得してしまう。




 何とクランクケース右側のオイル注入孔のプラグキャップが無いのである。この状態ではオイルまみれになるのは当然なわけで、K氏は右足が妙に滑る事でその事に気付きスピードを落しはしたが、止まる事はしなかった。我々に迷惑を掛けたく無かったのであろうが、気付いた時点で止まっていればこれほどオイルまみれになる事もエンジンオイルの減りも少なかったと思ったのだが、それは後の祭りであった。




 原因は芽登のパーキングでK氏がオイルを補充した時、キャップをシッカリ締めていなかったものと思われる。私は途中からしかその作業を見ていなかったため、キャップが穴に載っているのは見ていたがシッカリ閉めたかは確認していなかった。それにしてもK氏、二度北海道に来て二度共オイルまみれになるとは、余程のエンジンオイル好きと見える。革はミンクオイルで手入れをするが普通だが、K氏の場合はエンジンオイルしかも10W50の BP Vistra Racing4 の高級ブランドでお手入れするのがお好きなようである。

 冗談はさて置き、まずはK氏が持っていたオイルの残りを全部エンジンに入れる。これで差し当たり走るには支障は無くなったが、注入孔の穴をどう塞ぐかが問題である。栓になりそうな丸いものを、手当たり次第に穴に当てて見るが帯に短し襷に長し状態で適当な物が見付からない。持って来ていた工具の中をあさっていたら、パンク修理時に空気入れ代わりに使う小型ボンベが目に入りそれを穴に入れてみる。

 ボンベは穴より少し小さかったが、これにウエスを挟んで差し込めばオイル洩れは止められそうであった。何とかオイル洩れの対策は終了したのだが、しかしこのボンベ大作戦にも欠点がある事がその後判明する。注入孔の直ぐ下ではクラッチハウジングが回転しているためボンベを深く差し込む事が出来ず、ボンベの上側がK氏の長い足に当って走行中ニーグリップが出来ず、常に足を開いた暴走族乗り状態になってしまうのである。

 何とかオイル対策を終え手を洗ってからレストランに行く。強風のためと言う理由でいつもの入口が使えず横の入口から中に入ると、中は人でごった返していた。

 K氏がここを訪れるのは2回目で、前回は美味しいソフトクリームを食べた。ここにはもう一つお勧めが有って今回はそれを食べる事にする。



 もう一つお勧めそれはジンギスカンの焼肉である。ここのジンギスカンの羊肉は冷凍の丸い形をした物でなく、新鮮な生肉で臭みが無く牛肉のロースより美味いと私は思う。それで1人前500円(消費税込み)なんだから、ここではジンギスカン以外は食べる必要は無いと私は思っている。

 そして初めて食べたK氏のご感想は、「旨い!」の一言であった。旨いもんは「旨い。」としか言いようがないです


 焼肉の後のデザートに、ここのもう一つのお勧めソフトクリームを食べる事にする。今回初めて知ったのだがここのソフトには大小2種類の大きさが有って、大きいのが300円、小さいのが200円であるようだ。我々はいつも大きい300円の物を食べていたようである。 今回は200円の小を注文する。


 ソフトを作っているおじさんにここのソフトは美味しいく(今回2位にランキングを落してしまったが。)いつも食べているのだが、どこで作っているのか聞いてみた。

 おじさんが言うには、ここのソフトはメーカーに脂肪分の量等を指定して作らせている特製だそうで、他で同じ物は売っていないと言う。確かにこのソフトの味は他で味わった事は無い味である。ランキングは2位になったとは言え、自家製でなく普通に売っているソフトの中ではダントツ1位の美味しさのナイタイ高原のソフトクリームであった。

 R6がオイルを吹いた状況を検証してみると、K氏が言うにはキャップが無いのに気が付いたのは上士幌の街中からナイタイに向かう途中に有った砂利道手前であったと言う。そうだとすればキャップは砂利道の先にある筈で、砂利道の先から探す事にしてナイタイの駐車場を出発する。

 砂利道の先から各人道路上を目を皿のようにして黒いキャップを探すが、見付からない。私はもう一度砂利道まで戻って探したが砂利道付近では発見出来なかった。路上に落ちていれば発見は出来るが、道路脇の草むらに入っていたら発見は不可能に思えた。先に行っていたM氏が戻って来て、キャップが落ちたのはもっと先かもしれないと私に伝える。路上にオイルが垂れた跡がズーッと先まで続いていると言うのだ。

 上士幌の街中を通り過ぎ国道に出て芽登方向に走って探すが、発見出来ない。オイルの染みのような跡は、路上に点々とズーッと先まで続いている。どこまで行っても切りが無さそうなので、キャップの捜索を諦める事を決断する。こうなれば上士幌の街でバイク屋さんを探しパーツを探した方が早そうである。

 そして私がさっきから気になっているのはTZRのガソリン残量で、しばらく前にリザーブタンクに入っていてあちこち走り回って間に予備のガソリンを使ってしまっていた。Uターンしたついでにタンクの中を覗いて見ると殆んど空っぽ状態であったため、ここで2回目の空中給油をM氏から受ける事にする。先ずは上士幌まで戻りGSで給油する事にして、そこでバイク屋さんの場所を聞く事にした。

 上士幌のGSで聞いた話だと帯広方面の音更に行けばバイク屋は有ると言うが、宿とは反対方向なので向かいたくなかった。この近くにバイク屋がないか再度聞いてみると、糠平方向に少し走った所に自転車とバイクを扱っている所が有ると言うので、場所を聞いて行ってみる。

 国道から少し入った所にその自転車店は在った。自転車と原付を扱っているようで店内には自転車に混じってカブが置いてあった。中に入って声を掛けると40歳前後の男性が出てき来た。事情を説明してオイルのキャップが無いか聞いていると、奥から親父さんらしき年配の人が出て来て、バイクはそんなに置いてないので合うような物は無いだろうとの事だった。

 すると若い旦那が「ちょっと待ってて。」と言って店の脇にあった倉庫の中に消えて行った。しばらくして彼は二つのキャップを手に持って出て来た。彼はホンダの大型バイクを持っているようで、そのバイクからと他の1台(多分、ホンダ)からキャップを外して持ってきてくれたのだ。しかし私は持って来たのがホンダ車の物であったのを知って期待はしなかった。何故なら私はホンダとヤマハのキャップの大きさが違う事を知っていたからである。

 案の定キャップは合わなかった。我々はここでのキャップ調達は諦め、旦那と親父さんにご迷惑を掛けた事をお詫びして糠平に向かった。北海道の人は本当に親切で、金にもならない事でも親身になって心配してくれる人が多く、私は何度も助けられた経験を持っている。明日私は、そんな親切な北海道人にまた助けられる事になるのである。

 暗くなり始めた頃糠平に到着し、いつものGSに入る。北海道の田舎のGSは休日は午後5時に閉まる所が多いが、このスタンドの閉店時間は毎日午後7時だそうで休日は特に決っていないと言う。K氏のR6は持っていたオイルを補充してはいたものの、まだオイルが少ない状態であったため、ここでオイルを入れてもらう事にする。R6のエンジンは、0.8Lのオイルを飲み込んでしまったが、これで安心してエンジンを回せるだろう。

 オイルまみれになったR6を、K氏は洗車機を借りて車体に付着したオイルを洗い流したが、リヤタイヤに着いたオイルは水だけは落ちず黒く光っていた。そこでパーツクリーナーを売ってもらおうとしたが、売物は無いので使っている物を使ってもよいと親切に言ってくれた。2年前にR6のクランクケースが割れた時、ここでシリコンのコーキング材を分けてもらった事があって親切なGSさんに感謝・感謝である。CRCのパーツクリーナーでタイヤのオイルは除去され、タイヤは本来の艶消しブラックの色を取り戻したのであった。

 ここでもオイル注入孔を塞ぐ物を探したのだが、結局適当な物は見付からなかった。そこでK氏が閃いた。K氏のアイデアはアルミホィールを使って蓋を作る方法であった。アルミホィールなら幌加温泉の台所に行けばあるはずで、それを丸めて穴に回しながら押し込めば、ネジの形になって蓋になると言うアイデアであった。K氏のこのアイデア、試してみる価値は有りそうである。

 すっかり暗くなった糠平を発って、今日の宿幌加温泉に向かう。暗闇の原生林の中を走って午後6時半過ぎ、幌加温泉に到着する。玄関前のいつもの場所にバイクを止めると、バイクの音で我々が到着したのを知った親父さんが出て来て我々を出迎えてくれる。荷物を降ろして玄関に行くとおばさんも出て来て一年ぶりの挨拶を交わす。親父さんもおばさんも昨年と変わらず元気そうで安心する。

 親父さんは我々が台風の影響を受けなかったか心配していたようだったが、私が昨日は雨に降られたが今日は天気も良く大した影響は無かったと答えると、親父さんは日中幌加温泉付近では台風の吹き返しの強風か吹き荒れていたと教えてくれた。その風は外に置いてあった物が飛ばされる程の強風で、大変であったらしい。

 その話を聞いてグリーンロードの謎が解けた。台風の吹き返しの強風で木々の葉っぱが落とされ、その葉っぱが道路上に落ちてグリーンロードが出来てしまったと考えられる。それにしても強風はその一帯で吹いていたわけだから、どこにでもグリーンロードは出現しても良いと思われるのだが、グリーンロードはあの場所の数百メートルしか無かった。グリーンロードは台風が進んだ方向、風向き、斜面の向き、道路の向き等が絶妙に絡み合った偶然の産物であったかもしれない。

 親父さんに案内された今年の部屋は、階段を登った右側奥から2番目の部屋で、この部屋に泊まるのは久しぶりな気がする。今日の幌加温泉は山登りのお客で満室のようで、各部屋から話し声が聞えている。この宿は大雪の山々に登る登山者の基地ともなっているのである。登山者達の朝は早く、我々が起きた時殆んどの登山者が出発した後のため、他の部屋がガランとしてる事が多い。

 荷物を解いて先ず温泉に入り、その後食事にする事にする。1階の温泉に行くと誰も居なくて独りで湯船に浸かり1年ぶりの温泉を楽しむ。しかし、今年の温泉は何か違う事に気付く。いつもは湯船の底にお尻を着けて入っていたように思うのだが、今日はお尻を着けるとお湯が口まで来てしまいお尻を着けられないのだ。その原因は翌朝親父さんと一緒に温泉に入った時に判明した。

 ここの幌加温泉は、温泉の中から析出したナトリウムやカルシウムが床に堆積して棚田のように段々になっていて歩く時足の裏が痛い。湯船から溢れるお湯も少しづつ湯船の縁に析出して堆積、そのため湯船の縁が少しづつ高くなっていっていて、その高さは1年で2cmにもなると言う。そのため湯船の深さが徐々に増していて、尻が着かなくなってしまったようだ。私が年取って座高が縮んだわけでは無かったようなので安心する。

 親父さんが言うには、以前はこの堆積物をしょっちゅう取り除いていたそうだが、あるお客さんに取り除かないで残しておいた方が面白いと言われ、それからはそのままにしているとのだと言う。私もこのように棚田状態の温泉は他に見た事は無く、幌加温泉の特徴になっているのは確かでこれで正解だと思う。しかし、このままだと次第に湯船が深くなって、岩手県に在る鉛温泉のように立って入らなければならなくなる事が心配である。

 ここには打たせ湯があっていつもはお湯が熱くて入ってられないのだが、今年は何とか我慢出来る熱さであったため打たせ湯に当ってみる。親父さんの話だと例年より温度が下がるのが早いそうで、紅葉も1週間ほど早いそうだから今年冬の到来は早いのかもしれない。そんな事と冬とは関係は無いか。

 今回何故、私が打たせ湯に当ったかと言うと、実は昨日の夜アニマの里で痛めた首がまだ痛かったからである。走っている時も痛かったが、何故かガンガン行っている時はそれはそんなには感じなった。しかし普通にしている時、結構痛かった。温泉に入れば直るだろうとその時は簡単に考えていたが、そんな簡単な事ではない事を後で思い知る事になる。私の首の骨は確実に老化しており、今までに無いダメージを骨の軟骨に負っていた事を、その時の私はまだ知らなかった。


 温泉から上がって夕食を食べに一階に行く。おばさんに秋田から持って来たお菓子を渡すとおばさんは恐縮していた。こんなお土産でも、おばさんの喜んでくれる顔を見るのが楽しいのである。

 ここの夕食はいつも変わらない純和食の献立であるが、毎年食べていても飽きると言う事はない。山菜や秋鮭など北海道でなければ食べられない食材が生きていて、毎年美味しく頂いている。

 なお、ここのお櫃はアニマの里の物より大きく又上げ底でもなかったため、さすがのK氏も御櫃を空ける事は敵わなかったようである。


 食後玄関に行くとお犬様が出て来て一年ぶりのご対面となった。我々に忙しくじゃれ付いて来るのは相変わらずで、一通りじゃれ付いて愛想を振り撒いた後、サッと切り上げて帰ろうとするのも相変わらずである。

 ここでおばさんにアルミホィールをもらって、R6のオイルキャップ製作に取り掛かる。もらったアルミホィールを丸めで穴に押し込んで思惑通りに特製プラグは完成、そして2年前の教訓を生かしてその上に布を当てオシメ代わりとしてガムテープで止めた。これでオイル漬けから開放されると思われたのだが、世の中そんなに甘くはない事が次の日判明する。


 部屋に戻ってから今日の走りを振り返って話は弾み、そして夜は更けていった。私はいつものように寝る前にもう一度温泉に入り、温まって布団に入る。



  幌加温泉   一泊二食付き 5,900円(消費税込み)   
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