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そして八月初旬、テレビ撮影の日がやってきた。GSX−Rの私とV−MAXの彼女は十和田樹海ラインの七滝で清水國明と国井律子を待ち伏せる為、彼らが走るコースを先行するかたちで田沢湖から国道341号を通り小坂に向かったのである。
途中、私がある事件を起こした八幡平の山中で現場検証を行ったりしながら我々は待ち合わせ場所の十和田樹海ライン上り口の七滝向かったのだが、撮影班は待ち合わせ時間のPM1:30には現れなかった。
七滝に到着した二台のバイク
国井が乗るKAWASAKI W400
ゴールドラメのヘルメットが印象的だった。
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後に彼らの撮影スケジュールを聞いたのだが、午後1時半に彼らが七滝に現れる事など到底不可能なスケジュールで、最終的に彼らが到着したのは午後四時になってしまうのである。
彼らを待つ間、我々は樹海ラインを往復したりして時間を潰していたのだが、二時間半遅れで七滝に現れた清水國明は大変お疲れのご様子(この年の暮、清水氏に癌が発見されましたが、今考えるとその事も影響していたのかもしれません。その後清水氏は手術とリハビリを経て翌年の夏元気に 気ままに寄り道バイク旅 初夏の瀬戸内を行く編 に出演されております。)で、タレントのオーラも感じられず私には唯のオッサンにしか見えなかった。
その原因は30℃を越える気温の為だったり、早朝からの撮影と走行で疲労がピークに達していたものと思われるが、放送には使われなかった七滝での撮影を終えた清水氏は、売店で買ったアイスクリームを食べながら椅子にもたれ掛かって動こうとはしなかった。タレントとは本当に大変な商売である。
スタッフとの打ち合わせでは、清水が私に話し掛け一緒に樹海ラインを走ると言う段取りになっていたのだが、清水らに私を仕込んである事を話をしていない為、それはあくまでも自然の流れでそうなればという話だった。
制作会社は基本的にヤラセ(仕込みはOK!?)を嫌うようで、このままではわざわざ秋田市からやって来た私の出番が無くなってしまう事に焦ったスタッフは、私の所にコッソリやって来た。
そのスタッフは、この事態を打開する為私から清水に話し掛けてくれと言うではないか。
「 オイ オイッ 」
タレント(ギャラを貰っている)は向こうなのに、ノーギャラ(一応バイク業界の端くれとしてガソリン代も自分持ち)の私に
「タレントに対し素人の私に小芝居しれってか!?」
「Qを出しますから宜しく。」 と言ってスタッフはそ知らぬ顔で去って行く。
そして私に向かってQが出た。
それを見て私は覚悟を決める。
「やってやろうじゃないの・・・。」
演技と言えば幼稚園の学芸会でキノコの役しか演じた事のない私だが、生まれて初めてのテレビ出演(ラジオは20年位前にバイク関連でFM秋田に出た事が有った)に向かって歩み出す。
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